人権・家族そしてマスメディア ――拉致問題から考える ・ 蓮池透氏講演会

日時:平成15年6月28日 
場所:大阪・清風学園

 

講演後の質疑応答

★【質問】は生徒、――の項は蓮池透さんの応答です。

 

生活との兼ね合いは?

【質問】「拉致問題解決のための活動と、ご自身の生活との兼ね合いをどうされていますか。両立していくために、心がけたり工夫したりしていることがあれば教えてください」

――私は東京の電力会社で原子力関係の仕事をしています。プルサーマルのプロジェクトで、安全設計を担当しています。

 生活との兼ね合いは、会社にも行っていますが、会社も理解してくれています。ある雑誌に「勝手に休んでいる」と書かれましたが、そういうことはありません。昨年は半年間で、有給休暇を36日間使いました。普通はありえない、欧米並みの休暇のとり方をしました。

 自分の家族との生活は乱れています。家庭崩壊に近い。家族と一緒にいる時間がないので、これは今後の課題だと思っています。私の家庭がうまくいくためにも、早く解決してほしい。いつまでもやっている訳にはいかないので、政府は早く動いて、解決してほしいと思います。


拉致問題の解決とは?

【質問】「どの時点で拉致問題は解決したと言えるのでしょう。膠着状態の現在、これを打破する方法として、どんなことが考えられますか」

――少なくても、日本政府が認定している拉致被害者と家族が全員帰ってきて、北朝鮮が謝罪し、補償して初めて問題は解決したと言えると思います。

 調査会に330人から「うちも拉致ではないか」と言う申し出がきているので、そういう方たちの調査もきちんとやらなければいけない。こればっかりは、何人いるか分からない。早急に拉致された全員が帰ってきて、それに対して補償してもらう、金で解決する問題ではないが、それで解決と言えると思う。

 それと私が問いたいのは、日本国は何をやったのかということです。責任を追及したい。今すぐということではないが、日本の国が拉致された日本人を見捨てたという重い責任があると思うので、このへんの責任を、出来れば司法の場で問うていきたいと思います。

 膠着状態を打破する方法は、ファースト・ステップとしては、日本政府がはっきりしたスタンスを言明することです。そうすれば、向こうは恫喝を繰り返している訳ですから、日本が恫喝し返せば、必ず日本側を向いて来る。そのときに、日本がどういう態度をとるかにかかっている。経済制裁するぞと言うだけでも、相当なプレッシャーになる。それから、個人的には、飴をちらつかせるのもいいと思います。


北朝鮮の国民にはシンパシーを感じる

【質問】「北朝鮮という国家に対しては憎悪を抱いておられると思いますが、国家と民衆とは区別する必要があると考えます。北朝鮮で暮らす人々に対しては、どう思われていますか。また、在日朝鮮人の人たちに対する認識も聞かせてください。大阪は在日朝鮮人の多いところなので、関心は高いと思います」

――北朝鮮という言葉を聞くと、嫌気がさしますが、あの国は金正日の独裁国家で、あの人さえ幸せであればいいということで、一般の国民は何百万人死んでも知ったことじゃないという国です。私は、虐げられている国民に対してはシンパシーを感じますし、拉致された人と同様に救い出す必要があると考えています。国家を我が物顔で、自分の私有物にしてしまっている金正日を憎むべきだと思います。金正日が拉致指令を出したのは間違いないですから、憎むべきは金正日です。

 在日の方々は金正日と全く関係がありませんから、在日の方を悪く言う気は毛頭ありません。ただ、朝鮮総連に関しては、私は疑問を感じています。朝鮮総連イコール在日ではありません。

 9.17以降、在日の方に対する嫌がらせがあるという一部の報道がありましたが、そういうことは絶対にやるべきではないと思います。在日の方々とは全く関係のない話です。私たちが憎しと思っているのは金正日であって、北朝鮮の国民でもなければ、在日の方々でもないということは分かっていただきたい。

 私たちが言っているのは単純なことで「とにかく家族を帰してくれ」ということだけです。よく政治的な話題になってしまうのですが、右も左もありません。肉親を返してくださいということだけです。


傍観者にならないで

【質問】「私たち若者に今、問い掛けたいことは何かを教えてください」

――是非、お願いしたいのは、傍観者にならないでいただきたいといことです。私は今、情けない政府だ、外務省だといろいろ言いましたが、そういうことを言ってしまうと、もう日本の国なんて当てにならないと見放して、自分のことだけ守ろうと、自分さえよければいいやと思い、国のやっていること、いろんな出来事は、テレビの中の出来事だ、バーチャルな出来事だということになってしまう。何事に対しても傍観者のようになってしまうと、全員が傍観者になってしまうと、国家というものは滅びてしまいます。

 傍観するのではなくて、是非、ものを言う人間になっていただきたい。是非、いろんなことに対して疑問を抱き、疑問を抱いたら口に出して問いかけ、訴えるとかして、傍観者になっていただきたくはない。

 たまたま、私たちが被害者になりましたが、よく覚えておいていただきたいのは、この国というのは、誰もがそういう危険な目に遭う可能性があったということです。


北朝鮮の暴走の恐れは?

【質問】「経済圧力をかければ、金正日が暴走して、戦争になる恐れはありませんか」

――これまでに、(日本は北朝鮮に)「暴発するぞ」と脅されて、それをなだめるために、米120万トンを支援してきましたが、何も残してこなかった。向こうが強い態度できたら、それに対抗するぐらいの強い態度で出てくださいと言っている。恫喝におののいていたら、対話さえ出来ない。

 経済制裁をすれば暴発するというが、弟(蓮池薫さん)の言葉を借りれば、金正日という人は非常に臆病で、アメリカを恐れている。だから、彼らが戦争を仕掛けてくるということはないだろう。何故かというと、それは彼らの自滅を意味するからです。あんなに石油がなくて、原料がない国では、戦車は動かないだろうし、飛行機は飛ばないだろう。ミサイルは1機や2機は飛ばせるかもしれませんが、それをやると、アメリカに徹底的にやられるのは、彼らは十分に分かっているから、そう簡単に血迷ってミサイルを撃ってくることは考えられない。

 余り「制裁、制裁」と言うと、(北朝鮮に)残された人間の生命、健康に危害が加えられるのではないかということも考えられますが、我々はそういうリスクはしょっている。そういう覚悟はあります。だから、帰ってきた5人は絶対に「制裁してくれ」なんて言いません。それは自分の子供たちが大事だからです。制裁などと言えば、(子供たちに)何をされるか分からないと考えているからです。


拉致被害者の子供の立場は?

【質問】「拉致された方の子供を日本に連れ戻すと言われたが、子供たちは北朝鮮で産まれ、育ってきた訳だから、立場が違うと思います。子供たちの気持ちを、どうお考えですか」

――それは、弟に聞いたことがあります。弟は「子供を日本に呼び、日本で暮らす」とは言っていません。自分は日本に留まって、子供たちを日本に連れてきてもらいたい。それは、何でも自由に言える環境で、子供たちと一緒に、蓮池薫一家の将来を話し合いたいということです。長女は英語を勉強しているので、家族で話し合った結果、日本が嫌であれば、アメリカとかハワイとかオーストラリアとか、第三国のような国に一家で移住するオプションはある。そういう言い方をしています。

 しかし、弟は「北朝鮮で生まれ、育ったから、北朝鮮で暮らすのが幸せだ」という言い方はしていません。「北朝鮮は希望のない国だから、絶対にあんな国にいない方がいい」と言っています。彼らの家族が一番暮らしやすいところで暮らすと言っていますから、子供が帰ってくれば、北朝鮮以外の国で暮らすことになると思います。


家族が支えてくれた

【質問】「悲しくつらい時があったと思うのですが、そういう時に蓮池さんを支えてくれたものは何ですか」

――昔のことなので、つらいとか、悲しいとかいう感情はなかなかわいてこないものです。親は違うでしょうが。兄弟の関係は不思議な、ちょっとさめたようなところがあって、つらいなと思った時は、妹と「2人兄妹だったことにしようか」と話し合ったこともあります。やっぱり支えてくれたものは、妻や子供、私の家族です。

 今の運動の心の支えは、怒りです。


若者から勇気をもらいました

【質問】「最後に蓮池さんがお話しされたいことがあれば」

――東京におりますと、うちの娘を含めて、(若い人は)この問題には全く関心を寄せないので、今日は嬉しく思っています。みなさん、活発なご意見をいただき、かつ、この問題に関心を持って頂き、ありがとうございました。今日は若い方の力をいただきました。明日からまた、元気で頑張る勇気がわいてきました。勇気をもらいました。

 

 

 

 

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